- プロパンガスの料金はガス会社が自由に決められる
- 料金の値上げには不透明な部分があるので注意が必要
- プロパンガス料金の値上げが避けられない時の対処法がある
突然のプロパンガスの値上げに驚いたことはありませんか?
プロパンガス会社からのガス料金値上げの通知は突然行われます。
値上げを防ぐことは出来ないのでしょうか?
また、どうして値上げされるのでしょうか?
今回はプロパンガスの販売会社が値上げする理由と、その通知があった際の対処方法について説明していきます。
目次
プロパンガスが値上げされる理由
プロパンガス会社が料金の値上げをする場合、業界内では一ヶ月前までに通知して理由を明らかにするように定められています。
そこで、値上げの理由にはどんなものがあるのでしょうか。
料金はその会社が自由に決められる
まず、プロパンガスの価格は都市ガスなどの公共料金とは違って、自由料金制(自由価格)と呼ばれる仕組みで決められています。
参考 一般社団法人 北海道LPガス協会 LPガス料金について
つまり、プロパンガスの料金はどこも同じではなく、販売店がそれぞれ設定しているのが現状なのです。
そして、料金にはガスそのものの価格だけでなく、サービスや保安対策料などが含まれているので、契約する際は契約書の内容をよく確認する必要があります。
このような事情でプロパンガスの販売会社は自由に値上げを行うことができるのです。
プロパンガス会社が説明する値上げの理由
このようにプロパンガスの販売会社は自由に値上げを行える状況にはありますが、値上げをする際は事前に通知するよう、資源エネルギー庁から指針が通達されています。
ではプロパンガスが値上にはどのような理由がああるのか紹介していきたいと思います。
理由1. 輸入価格の値上がり
日本で流通するプロパンガスは、海外からの輸入に頼っています。
LPガス(プロパンガス)の取り扱い事業者団体である日本LPガス協会では、プロパンガス輸入の現状を次のように説明をしています。
供給の現状
我が国で使われているLPガスの約75%は海外からの輸入したもので、残りの約25%は原油精製時及び化学製品の生産時に発生する国内生産分です。(中略)
輸入元の構成は、従来よりサウジアラビアやカタール等の中東地域にその多くを依存していました。
しかし、近年アメリカ産のシェール随伴LPガスの輸入比率が大幅に増加しており、現在では同国が我が国最大のLPガス輸入元となっています。
将来的には、環太平洋域を中心とした新規天然ガスプロジェクトに伴うLPガスの増産体制も見込まれ、調達先の多様化により、更なる安定供給が確立されます。引用 日本LPガス協会 供給の現状より
このように、日本で流通しているプロパンガスの4分の3が輸入に頼っており、そのうちの約7割の原産国がアメリカというのが現状です。
その為、アメリカなどの輸入元諸国の出荷価格が上がればそれに伴って、プロパンガスの価格も上がることになります。
理由2. 為替レートの変化
1ドルはおおよそ100円前後で推移していますが、社会情勢などで価格は日々変化しています。
例えば、2020年6月の為替レートは1ドル107.76円ですが、2018年の11月の為替レートは113.0円でした。
2018年よりも2020年の方がより少ない円で1ドルに換金出来るため、ドルよりも円の価値が高まり、「円高」と呼ばれる状態になっています。
これが逆に「円安」になると、ドルの価値が高くなるので、輸入するためによりたくさんのお金を支払うことになります。
そのため、為替レートが円安になると、プロパンガスの価格が上がってしまうのです。
理由3. 需要と供給のバランス
プロパンガスの販売価格は、需要が高まる秋から冬にかけて上がり、春先から夏にかけて下がる傾向にあります。
寒い時期は消費量が増えるため、欲しい人が多くなります。
これは需要が高い状態です。
そのため、冬場は輸入価格そのものが高めになる傾向にあるのです。
検針票の内訳に「季節変動を考慮した原料調整」や「原材料調整費」などの項目を確認してみましょう。
値上げの理由は正当か
以上、値上げの大きな理由を3つ説明しました。
しかし、これらの理由は正当なものなのでしょうか?
実は、以前からプロパンガス料金の設定は不透明であることが指摘されており、行政も業界にそれを改善するよう働きかけを行なっています。
そこで、経済産業省 資源エネルギー庁では、2017年に取引適正化ガイドラインを制定しました。
そこでは以下のような指摘をしています。
○ LPガスは、全国総世帯の約4割(約2,400万世帯)の家庭用燃料として利用されるなど、国民生活を支える重要なエネルギーであり、また、災害時には被災地を支える「最後の砦」となる重要な役割を担っている。
○ LPガスの輸入価格や国内卸売価格が下落する中、小売価格も下落傾向にあるが、その下落幅は輸入価格や卸売価格と比べて小さいにも関わらず、LPガス料金は高止まっている。
○ 電力の小売事業が平成28年4月から自由化され、都市ガスの小売事業も平成29年4月から自由化された。今後は消費者自らが、エネルギー供給事業者を価格やサービス内容等を比較して自由に選択することになり、家庭用エネルギーは垣根を越えた競争が激化する見込みがある。
○ こうした中、消費者からはLPガス料金の不透明性と、取引方法に関する問題点が指摘されている。
○ 今後ともLPガスが多くの消費者から選択されるエネルギーとなるためには、問題点の指摘に真摯に対応することが必要不可欠である。
(中略)
○平成27年度に、全国のLPガス協会に設置されているお客様相談所に寄せられた相談件数は4,755件(前年度に比べて361件減少)。
○相談内容は、『保安』に関するものが最も多く1,204件(前年度比102件増加)。次いで『その他』が1,166件(前年度比56件増加)。『LPガスの価格』が1,154件(前年度に比べて220件減少)、となっている。
○『LPガスの価格』に関する相談内容としては、料金制度や地域の平均価格、料金改定に関するものが圧倒的に多い。
以上のように、プロパンガスは生活基盤を担う重要なエネルギーでありながら、価格の設定には透明性が欠けていること、消費者もそれに不信感を抱いていることを指摘しました。
プロパンガス料金値上げに関する疑問点
プロパンガスの価格設定が不透明だと指摘される理由はどこにあるのでしょうか?
理由1. 輸入価格と卸売価格が大きく下がっているにも関わらず、小売価格が下がらない
上記の取引適正化ガイドラインの中でも指摘されていることですが、輸入価格に運賃などを加えた価格である「CIF」は2014年の高値を最後に価格は低下し、一定の低い水準を保ったままとなっています。
例えば下の表は、過去5年間の輸入価格、卸売価格、小売価格の1㎥あたりの平均の値段です。
輸入(CIF)価格(円/㎥) | 卸売価格(円/㎥) | 小売価格(円/㎥) | |
---|---|---|---|
2015年 | 120.4 | 248.0 | 778.6 |
2016年 | 83.4 | 216.0 | 756.9 |
2017年 | 113.9 | 244.6 | 760.0 |
2018年 | 133.6 | 266.7 | 772.0 |
2019年 | 104.3 | 248.1 | 777.2 |
これを見ると、輸入価格の変動に卸売・小売の価格が比例していることがわかります。
輸入価格があがれば、卸売業者や小売業者がプロパンガスを購入する際にかかるコストも当然高くなるので、その分の値上げが行われるのはごく自然な動きです。
もちろん小売価格には消費税が含まれているため、2019年は増税した点に留意する必要はあります。
しかし、一見値上がりしているように見える2019年の小売価格ですが、実は消費税抜きで見るとわずかに値下がりしています。
このように、輸入価格や卸売価格の値下がり具合と比べると、小売価格は値下がりしていないことがわかります。
場合によっては逆に小売価格だけが、値上がりしているのです。
なお、輸入価格は季節変動による一時的な値上がりはありますが、全体としては値下がり傾向にあります。
結果として、「理由1.」で説明した輸入価格の値上がりは、正当な理由にはならないといえるでしょう。
理由2. 為替レートは輸入価格に反映されている
「理由2.」で為替レートが円安になることによって値上がりがあると記載しましたが、上記の輸入価格に運賃などを加えた価格「CIF」は為替レートも踏まえた価格です。
為替レートによって値上がりすることはありますが、2014年の高値以降、CIFの値段が大きく上がることはありません。
そのため、為替レートを理由に値上げすることも正当とは言えないでしょう。
季節変動による価格の上がり下がりは継続してありますが、販売業者が年間を通して値上げができるほどの理由にはなりません。
値上げされる本当の理由
このように、一般的に通知されている理由は適切とは言えないことがお分かり頂けたと思います。
それでは本題に入りましょう。
プロパンガス料金が値上げされる事情にはどんな理由があげられるでしょうか。
例えば以下のものがあります。
- 高くなる人件費を補うため
- 赤字を補うため
- 利用者減少による売上の低下
などの経営にまつわる事情が多くを占めていると考えられます。
他にもあるプロパンガス価格の問題点
ここ数年間の輸入価格や為替レートを理由とする値上げには少し透明性に欠ける点があることを説明しました。
しかしその他にもプロパンガス料金には不透明な点があります。
経済産業省 資源エネルギー庁が定めた「液化石油ガス(プロパンガス)の小売営業における取引適正化指針」では「液化石油ガス販売事業者が取り組むべき事項」として以下のような点を挙げています。
液化石油ガス販売事業者が取り組むべき事項
(1)標準的な料金メニュー等の公表
液化石油ガス販売事業者は、一般消費者等が料金水準の適切性を判断しやすくなるよう、自社の標準的な料金メニュー(例えば、液化石油ガスの一定使用量ごとに発生する料金や使用量に係わらず発生する基本的な料金等)及び一般消費者等による平均的な使用量に応じた月額料金例(以下「標準的な料金メニュー等」という。)を公表する必要がある。公表にあたっては、戸建住宅と集合住宅で標準的な料金メニューが異なる場合はそれぞれの標準的な料金メニューを公表する必要があり、従量単価がそれぞれで異なる場合は、消費者等からの照会に対し、適切に回答する必要がある。
標準的な料金メニュー等の公表は、不特定多数の一般消費者等が自由に閲覧できるよう、自社のホームページを有する者は当該ホームページに、それ以外の者は店頭の見えやすい場所に掲示するなどの方法により行う必要がある。
また、実際には適用されていない料金メニューを、標準的な料金メニュー等として公表した場合には、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)で禁じている不当表示となるおそれがあることに留意が必要である。
なお、標準的な料金メニュー等の公表に取り組んでいる液化石油ガス販売事業者は、一般消費者等が安心して液化石油ガス販売事業者を選択できる環境の整備に貢献しているものと認められる。(中略)
(3)料金を変更する際の一般消費者等に対する事前通知
液化石油ガス販売事業者は、一般消費者等と締結した液化石油ガス販売契約に基づく液化石油ガスの販売価格を変更する場合には、原則として変更後の販売価格の適用が開始される日の1か月前まで(販売価格を引き下げる場合及びあらかじめ一般消費者等との間で液化石油ガスの使用量に応じて発生する料金を液化石油ガスの輸入価格等の変動に応じて変更する旨の契約を締結し当該契約に基づいて当該料金を変更する場合には、遅くとも変更後の販売価格の適用が開始される日の前まで)に、一般消費者等に対して、検針票又は請求書等に変更後の販売価格及び変更する理由を記載して通知するか、検針票又は請求書等に変更後の販売価格及び変更する理由を記載した書面を添付して通知する必要がある。なお、一般消費者等に対し変更後の販売価格及び変更の理由を通知する際には、変更前の販売価格と変更後の販売価格が比較できるよう、例えば、変更前の販売価格と変更後の販売価格の両方を記載する、変更後の販売価格を記載し変更前の販売価格と比べて「○○円の値上げ」又は「○○円の値下げ」と記載するなどした上で、変更後の販売価格の文字を変更前の販売価格の文字や周囲の文字よりも大きくするか、変更後の販売価格の文字の色を変更前の販売価格の文字の色や周囲の文字と異なる色にするなどして、一般消費者等が変更後の販売価格を容易に判別できるよう記載する必要がある。
引用 経済産業省 資源エネルギー庁 液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針より
まとめると、資源エネルギー庁は、
- 標準的な料金を分かりやすく公表すること
- 料金を変更する場合には1ヶ月以上前に通知すること
上記の2点が達成できていないことを指摘しているのです。
標準料金を公表していない事業者も
では、この指針が定められた後、実際にプロパンガスの販売事業者は料金を公表したのでしょうか?
これについても資源エネルギー庁が、2018年3月に調査を行なっています。
全国のプロパンガス販売事業者の18,589件に対して調査票を送り、結果、そのうちの約65%にあたる12,191件から有効な回答が得られたとしています。
件数 | 全体(18589件)中の割合 | |
ホームページと店頭で料金を公表している事業者 | 257件 | 1.4% |
ホームページのみで料金を公表している事業者 | 609件 | 3.3% |
店頭でのみ料金を公表している事業者 | 8,348件 | 45% |
料金を公表している事業者(3つの合計) | 9,214件 | 50% |
料金を公表していない事業者 | 2977件 | 16% |
有効な回答をしていない事業者 | 6398件 | 34% |
公表していない事業者+回答していない事業者 | 9375件 | 50% |
参考 LPガス販売事業者によるLPガス料金の公表状況調査の結果について
上記の調査結果から、2018年の時点で料金設定をきちんと公表している事業者は、まだ半数程度です。
16%は公表をしておらず、34%は公表しているかどうかもわからない状況です。
以上から、ガイドラインで明記されていてもまだ業界全体が基準を達成できていないことが分かると思います。
また、値上げの1ヶ月以上前の通知もどこまで遵守されているか不明です。
以上は経済産業省からの指針ですが、違反しても事業者に罰則はありません。
しかし、経済産業省は「今後も取引適正化ガイドラインが遵守されず、一般消費者等から苦情・相談が寄せられた場合は、更なる措置を検討する」としています。
参考 液石法省令等の一部改正、取引適正化ガイドラインに係るQ&A
値上げが正当かどうかを判断する方法
プロパンガス会社から値上げの通知をされた際、その値上げが適正な範囲の値上げなのかどうかを知りたい場合はどうしたら良いでしょうか?
地域の平均価格を確認する
まず、お住まいの地域のプロパンガスの平均的な価格を確認しましょう。
地域の販売価格の平均は、経済産業省の関係団体である石油情報センターが発表しています。
これは、石油情報センターがプロパンガス販売店に聞き取り調査を行い、各地域・各都道府県ごとに出している販売価格の数値です。
お住まいの地域のプロパンガス価格の相場をチェックすることができます。
あなたが契約しているプロパンガス業者のガス料金が、ここに記載されてる価格よりも高いのであれば、それは適正な価格だと言えない可能性があります。
値上げの理由を調べる
プロパンガス会社から値上げの通告があった場合は、値上げの理由も合わせて通知されます。
その理由が正しいかどうか、調べてみましょう。
例えば、「輸入価格の値上がり」「為替レート(円安)に伴う値上がり」という理由であったとするなら、日本LPガス協会の公表している最新のデータから、その理由が正当なもかどうかを調べることができます。
合理性に欠ける理由を挙げている場合、正当な値上げではない可能性があります。
値上げは拒否できるのか
もし値上げが正当ではないと思えた場合は、料金の値上げを拒否することが出来るのでしょうか?
残念ながら、難しいと言えます。
なぜなら、プロパンガス料金は自由料金制なので、販売店ごとに自由に料金を設定できてしまうからです。
しかし、値上げ理由が正当ではないと思った場合は、プロパンガス販売会社に直訴することができます。
地域の平均価格や輸入価格の情報と照らし合わせて交渉すれば、値上げを取りやめてくれる場合もあります。
プロパンガス料金の交渉がうまくいかなかった場合の対処法
ここまで、料金の値上げに対して交渉してみましょう、と説明しました。
しかし、必ずしもプロパンガス会社は料金交渉に応じてくれるわけではありません。
この場合はどうしたら良いでしょうか?
思い切ってプロパンガス販売店の乗り換えを検討することをおすすめします。
持ち家の方、もしくは店舗を所有している方であれば、自由にプロパンガス販売店を選んで、変更することができます。
プロパンガス料金の値上げが1か月以上前に通知することが定められた理由には、消費者が判断出来る余裕が持てるようにするためです。
前述したとおり、料金の値上げの多くが事業者の事情であるのが現状です。
事業者の乗り換えで、経営状態の良いプロパンガス会社を選択することができれば、より低価格で高品質なサポートを受けられる場合もあります。
なお、賃貸マンションやアパートなどの賃貸物件にお住まいの場合は、ご自身でプロパンガス会社を変えることはできません。
この場合は、大家さんや管理会社の許可が必要ですのでぜひ相談してみてください。
まちガスでは、信頼できるガス会社を紹介しています。
値上げの通知が来て困った場合は、ぜひ気軽にご相談ください。
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まとめ
いかがでしたか?
プロパンガス会社から突然の値上げ通知をされると不安になるものです。
しかし地域の平均価格を調べて交渉することで、料金を据え置いてくれる場合もあるのです。
もし値段交渉に応じてもらえなくても、ガス会社を乗り換えることで元の料金よりも安くなる場合もあります。
プロパンガス会社から値上げの通知があった際は、まずは冷静に検討することが大切です。
値上げが通知されたことをきっかけに、もっと優良なプロパンガス会社と契約したいと思った時は、まちガスにご相談ください。
まちガスは優良なプロパンガス会社をご紹介致します。
気軽にお問い合わせください。