- プロパンガスそのものに強い危険性がある訳ではない
- 一酸化炭素中毒は命に関わる重大事故に繋がる
- 一酸化炭素中毒の事故は適正な器具と正しい使い方で防ぐことが出来る
プロパンガスは正常に燃焼していればとても安全なガスです。
しかし不完全燃焼やガス漏れを起こした場合、毒性の強い一酸化炭素が発生して、中毒を引き起こす事故に繋がる場合があります。
今回はプロパンガスによって発生する一酸化炭素(CO)と、その中毒について説明をしていきます。
目次
プロパンガスの危険性
プロパンガスは毒性がなく、無色無臭のガスです。
家庭用には、ガス漏れに気付けるようにするために、硫黄系の化合物で独特の臭い(タマネギの腐ったような匂い)を人工的に着臭してありますが、本来は匂いがありません。
また、プロパンガスは燃焼時に排出する二酸化炭素(CO2)の排出量も少なくので、環境に優しいエネルギーと言われています。
その一方、プロパンガスは爆発事故などのイメージも強く記憶に残ることも多く、高い危険性があると勘違いする方もおられるかもしれません。
しかし、2019年に起きたプロパンガスの漏洩事故198件のうち、ガスボンベ容器から漏れたケースはバルブ部分を含めても9件と全体の5%未満でした。
ほとんどが配管やガス器具の不備などで、都市ガスでも発生する事故でした。
(高圧ガス保安協会 令和1年度液化石油ガス関係事故年報より)
また、平成29年中に発生した都市ガスとLPガス(プロパンガスなど)の事故のうち消防機関が出動したもの総件数は715件。
ガスの種類別に内訳を見てみると、都市ガスによるものが397件、それに対してプロパンガスを含むLPガスによるものは318件とプロパンガスの事故は都市ガスよりも件数が少ない状況でした。
(総務省消防庁 平成30年版消防白書より)
また、令和元年度の調査では都市ガスを利用している世帯数が約2,600万世帯で、それに対してプロパンガスを利用している世帯数は約2,400万世帯です。
(一般財団法人エルピーガス振興センター LPガスガイドより)
このように、都市ガスとプロパンガスを比較した場合、プロパンガスそのものに高い危険性があるわけではないということがお分かり頂けると思います。
どんな時に一酸化炭素中毒が起こるのか
プロパンガスそのものに高い危険性が無いわけではないということは分かりましたが、それでも注意が必要なのが一酸化炭素中毒です。
どういった状況で発生するのでしょうか。詳しく説明していきます。
プロパンガスで一酸化炭素が発生する仕組み
プロパンガスは正常に燃えれば、一酸化炭素(CO)などの中毒性のある気体は発生しません。
この場合、空気中の酸素と反応して二酸化炭素(CO2)と水蒸気(H2O)だけが空気中に排出されます。
これを完全燃焼といいます。
ガスコンロの場合、キレイな青い炎が出ていれば問題なく完全燃焼している状態です。
しかし、プロパンガスと酸素がうまく反応出来ない状況になると、炎の中にスス(炭素)や一酸化炭素などが排出されてしまいます。
これを不完全燃焼といいます。
ガスコンロで不完全燃焼を起こしていると酸素不足で温度が上がらず、赤い色の炎になっている場合があります。
これは危険な状態です。
このように、不完全燃焼は、空気の供給が十分に行われないために起きますが、主な原因は2つです。
- 炎の燃焼温度が極端に低い
- 空気中に酸素が十分でない
特に酸素不足になった場合に事故が発生しやすいので注意が必要です。
また、不完全燃焼を起こすと一酸化炭素が作られてしまいますが、同時に炭化水素系やアルデヒド系のガスが発生することもあります。
その際、プロパンガスに元々ついている匂いとは異なる別の異臭がする場合もあります。
その場合は特に注意が必要です。
ただし、一酸化炭素そのものには色も匂いも無いため、気付かないうちに一酸化炭素中毒になるといいうケースも多くあります。
命に関わることもある大変危険な中毒です。
一酸化炭素中毒が起こるとどうなるか
一酸化炭素中毒とはどんな中毒なのか、どういった症状が起こるのかについてここで詳しく説明していきます。
一酸化炭素中毒とは
一酸化炭素中毒は、一酸化炭素(CO)を含んだ空気を呼吸した場合に起こる中毒です。
一酸化炭素には強い毒性があり、無色無臭のため気づくことが困難で、わずかな量を吸ってしまうだけでも中毒症状を引き起こす場合があります。
全身の細胞に酸素を運んでいるのが血液の中にあるヘモグロビンという物質です。
一酸化炭素はこのヘモグロビンとの結合力が強く、一酸化炭素を一度吸い込んでしまうと、血液の中で酸素を運ぶ力が急激に低下します。
そうなってしまった場合、呼吸して酸素を取り込もうとしても十分に吸収することが出来ず、結果的に酸素欠乏状態に陥ってしまいます。
一酸化炭素とヘモグロビンとの結合は非常に強いため、もし体の中に一酸化炭素が取込まれてしまうと、なかなか回復しません。
安全な空気を吸っている場合でも、身体の中に取り込まれた一酸化炭素が半分になるには4時間程度かかるとも言われています。
また、軽度の中毒症状は風邪に似ていることもあり、体調の変化を見逃しがちなため、気づいたときには重症化しているということも少なくありません。
実際に2010年から2019年までの10年間で発生した一酸化炭素中毒に関する事故は55件で、そのうち死亡事故も9件ありました。
年間で5~6件発生し続けており、命に関わることも多いため注意が必要だと言えます。
(経済産業省 LPガス事故情報2019年事故集計表より)
一酸化炭素中毒の症状
一酸化炭素中毒の症状の重さは、吸った空気の一酸化炭素濃度と吸入時間により大きく左右されます。
一酸化炭素濃度 | ppm | 呼吸時間および症状 |
0.02% | 200 ppm | 2~3時間内に軽い頭痛 |
0.04% | 400 ppm | 1~2時間で前頭痛 2.5~3.5時間で後頭痛 |
0.08% | 800 ppm | 45分で頭痛、めまい、吐気 2時間で失神 |
0.16% | 1600 ppm | 20分で頭痛、めまい 2時間で致死 |
0.32% | 3200 ppm | 5~10分で頭痛、めまい 30分で致死 |
0.64% | 6400 ppm | 1~2分で頭痛、めまい 10~15分で致死 |
1.28% | 12800 ppm | 1~3分で死亡 |
※0.01%(100ppm)であっても幼児などの場合では、数時間でけいれんを起こすこともあります。
※ppmとは(Wikipediaより引用)
量がごく少量のため少しイメージしにくいかもしれませんが、例えば、0.04%の濃度というのは標準的な浴室(5立方メートル)に、2リットルのペットボトル1本分のガスを混ぜた程度です。
このように、ごく少量でも命に関わってしまうことがお分かり頂けたと思います。
もし、給気及び排気が十分に行われない室内でプロパンガスを燃焼させると、燃焼排ガスが室内に充満して短時間に空気中の酸素が減少し、不完全燃焼の原因となり、一酸化炭素の発生によって一酸化炭素中毒につながる危険性があります。
実際に発生した事故の事例
一酸化炭素中毒の事故で実際に発生した事例をご紹介します。
- 排気筒の腐食・脱落による一酸化炭素中毒
排気筒トップの先端が腐食・脱落していたために建物内に排気が漏れ、部屋に一酸化炭素が流出。
一酸化炭素中毒が発生した。
また、気密性の高い建物だったために、外壁と内壁の間を伝わって上階にも一酸化炭素の流出があり、中毒者が増えてしまった。
- ファンの目詰まりと換気不良による一酸化炭素中毒
浴室で湯沸かし器を長時間使用し、ファンの目詰まりや換気不良から不完全燃焼が発生した。
浴室の換気扇が回っていたため、燃焼排ガスが浴室内へ流れ込み、一酸化炭素中毒が起きたと考えられる。
このように、一酸化炭素中毒は換気不足や長期間使用した器具の破損・不具合から引き起こされるケースが多くあります。
また、気密性の高いマンションやアパートなどは、より一酸化炭素中毒が発生しやすく、被害を拡大させる可能性があります。
安全にプロパンガスを使用するには
それではこういった一酸化炭素中毒の事故を起こさないように安全に使用するためにはどういった点に気をつければ良いでしょうか。
ここから詳しくご説明をしていきます。
ガスを使用する時は十分な換気を行う
プロパンガスが正常に燃焼するためには、十分な酸素(空気)が不可欠です。屋内設置型のガス機器を使用する時は、換気扇を回したり窓を開けるなどして換気を行いましょう。
また、屋外設置型ガス機器を使用する時も、囲いの設置や隣家と接近した場所への設置を避け、ガス機器に十分な酸素が供給されるように注意が必要です。
ガス燃焼機器の定期的な点検・メンテナンスを行う
毎日の生活で使用するガス機器は、耐用年数は10年ほどです。
設置後5年程度を経過した頃から不具合が発生する可能性もあります。
そのため、定期的な点検は必ず行うようにしましょう。
埃やススなどが蓄積すると給湯器に不具合が生じ、一酸化炭素中毒事故に繋がる恐れがあります。
特に気をつける機器やポイントには以下のようなものがあります。
ガスの炎の色や匂いは正常か
プロパンガス使用時には必ず着火を確認し、炎の色や臭いの有無を点検しましょう、
炎の色は青色が正常な状態です。もし赤や黄色の炎になっていれば不完全燃焼のサインです。
また、ガス使用中は異臭がしないかをあわせて確認しましょう。
プロパンガスそのものが漏れている場合も腐ったタマネギのような匂いがしますが、不完全燃焼が起きている場合も異臭がする場合があります。
おかしいと思ったらすぐに火気の使用はやめて窓などを大きく開けて換気を行いましょう。
その際、ガスの元栓は閉め、電気機器のスイッチは押さないようにします。火花が出て火事や爆発の原因になる場合もあります。
ガス設備のえんとつはふさがっていないか
ガス設備の給排気筒(えんとつ)が正常な状態かはよく確認が必要です。
筒の内側に鳥の巣ができたり、筒の出入口に荷物や土砂・積雪等があり給気や排気ができない場合は事故に繋がる場合があります。
また、内・外装工事時に給排気筒がふさがれたり、ズレやはずれることがあるので注意するようにしましょう。
排気管は外れたり腐食がないか
排気管の外れや腐食も危険です。
日頃のお手入れや専門業者によるメンテナンスも欠かさず行うよう心がけましょう。
機器に何らかの異常が認められた際にはすぐに使用をやめ、専門業者やガス販売事業者へ連絡しましょう。
安全性の高いガス機器を使用する。
古いガス機器を長期間に渡って使用し続けている場合、一酸化炭素中毒などの事故やトラブルなどが発生しやすくなります。
不完全燃焼防止装置付きの燃焼器具やFF式(強制給排気式)、屋外へ設置するタイプの給湯器・ガス釜等の安全性の高い機器を使用することで事故を防ぐことが出来ます。
ガス警報器を設置する
ガス警報器には一酸化炭素に反応して警報が鳴るものやガス漏れに反応するものなどがあります。
必要なガス警報器を設置することでガス漏れや一酸化炭素の発生に気付くことが出来ます。
こういった警報器を設置することで事故を防ぐことが出来ます。
その他の注意点
- 小型湯沸器を正しく使用する(お風呂に使ったり、シャワーとして長時間使用するなどしない)
- コンロとストーブなどを同時に使用するときは、特に換気に注意する。
- 風呂がまや大型湯沸器には、必ず換気口と排気設備を設置する。
※気分が悪いなと思ったら直ちに使用を中止し、充分な換気を行うようにしましょう。
プロパンガスを業務用で使用する場合は特に注意が必要
家庭でプロパンガスを使用する場合も注意が必要ですが、学校施設や飲食店やホテル、食品工場など大量にプロパンガスを使用する施設や事業者では多くの人に被害が出るケースが発生するため、特に注意が必要です。
平成21年1月には鹿児島県の高校で18名が病院に搬送される事故が、平成21年6月には山口県の宿泊施設において21名が病院に搬送され、うち1名が死亡する事故が、平成21年9月には栃木県のパン屋において従業員11名が病院に搬送される事故が発生しています。
こうした事故は、換気が不十分であったり、燃焼器具の点検不足などによって不完全燃焼を起こして一酸化炭素中毒の事故へと繋がります。
一酸化炭素中毒事故がこうした施設で発生した場合、多くの人が被害にあう可能性がありますので、管理者や責任者は自身で換気設備やガス機器の管理を徹底するとともに、従業員や関係者にも呼びかけましょう。
事故が起きないようにするにはこうした日々の点検や設備の適正な使用と注意喚起が欠かせません。
注意する点は基本的には前述した家庭用と同様ですが、業務用厨房施設では不完全燃焼防止装置などの安全装置が付いていない燃焼器が多く使用されていたり、ガス燃焼器具を日常的に使用しておらず点検が十分でない場合などがあります。
そういった場合も事故を未然に防ぐため、ガス警報器を設置するなどの対策を行うことがおすすめです。
まとめ
いかがでしたか?
プロパンガスそのものは正しく使用すれば安全ですが、適切でない使用や点検不足などが原因で毒性の高い一酸化炭素が発生し、中毒に陥る事故が発生してしまうということがお分かりいただけたと思います。
ガス機器を使用する際は説明書などに記載された取り扱いの注意点などを確認するとともに、プロパンガスのは販売店からも注意喚起などが通知される場合があります。
内容をよく確認して、安全に事故の起こらないようにプロパンガスとガス機器を正しく使用しましょう。
信頼できるプロパンガス事業者への乗り換えのご相談はもちろん、こういった怖い事故を未然に防ぎたいといったお悩みがあるようでしたら、ぜひまちガスにお任せください。
あなたの不安を解決するためにお力になります。
どうぞ気軽にお問い合わせください。