- LNGは「液化天然ガス(Liquefied Natural Gas)」の略称
- LNGは天然ガスをマイナス162℃まで冷却して液体状にしたもの
- LNGは火力発電所の燃料や都市ガスの原料として使われる
LNGという言葉を聞いたことはあるでしょうか?
LNG(エルエヌジー)とは、都市ガスの原料として使われる液体状の天然ガスのことです。
今回はLNGの特徴や天然ガスの特徴について説明をしていきます。
目次
LNG(エルエヌジー)とは
LNG(Liquefied Natural Gas,液化天然ガス)は、気体である天然ガスを冷却して無色透明の液体の状態に変えたものです。
天然ガスは気体の状態で地中の奥深くにありますが、その気体を-162℃まで冷やすことで液体に変わり、体積(大きさ)は600分の1になります。
600分の1の大きさというと、例えば学校のプール(25m×12m×0.8m)の気体が、家庭用のおふろ(200リットル)わずか2杯分になる計算です。
そうして冷却し、体積が液体に変わった天然ガスを液化天然ガス(LNG)とよびます。
液化して体積を小さくすることで、一度にたくさんの量を運ぶことができるようになります。
そうやって液化した天然ガスを巨大なLNGタンカーで運ぶことで、一度に16万5千㎥という大きな量を運ぶことが可能になります。
これは22万軒の家で1年間使用される程のガスの量です。
輸入されたLNGのうち、7割近くが火力発電所の燃料、残り3割強が都市ガス用として使われています。
CNG(シーエヌジー)
一方、天然ガスを圧縮して体積を小さくしたものをCNGといいます。
天然ガスとは
天然ガス(てんねんガス)は、石炭や石油と同じく、天然に存在する化石燃料と呼ばれるエネルギーの一つです。
天然ガスは、動物や植物の死骸が数億年〜数千万年前の時間をかけて地中の熱や土・海の重みによって変化して生成されたものと考えられています。
天然ガスも石油と同じ化石燃料ですが、石油に比べて、環境への影響が低いといわれています。
天然ガスは、メタンを主成分としており、ガス中毒のもとになる有害な一酸化炭素が含まれていません。
また、生硫黄分など不純物も、産地での液化の過程ですべて取り除かれるので、不純物をほとんど含みません。
そして燃焼したときに発生する窒素酸化物が石炭や石油より少なく、硫黄酸化物は発生しないため、燃やしても酸性雨などの環境汚染が起こりません。
天然ガスは地球を温暖化するといわれる二酸化炭素の発生も少ないクリーンで安全なエネルギーで、LNGを気化させる過程においても、大気や海水などを汚染する心配がありません。
そのため、環境保全の点でも安心なエネルギーといえます。
天然ガスの生産地は世界各地に広く分布していて、埋蔵量も豊富です。
このため、長期的な安定供給・環境負荷の小ささという利点があるため、発電燃料や都市ガスの原料として使われるだけでなく、天然ガスで走る車が開発されるなど利用が広がっています。
輸送方法
もう一つがLNGタンカーで、中東やオーストラリア、東南アジアから日本や韓国への輸送に多用されています。
日本の場合、タンカーで搬入されたLNGは、港湾部を起点とするパイプラインで火力発電所や都市ガス事業者に送られます。
輸入するときは専門の設備でまず冷やして液化し、その後船に冷やしたまま入れて運びます。
日本に着いた後も、冷却してLNGの状態のままで保っておき、使うときに温めて気体にして使います。
また、LNGを運搬する船の海難事故は極めて少ないという特徴もあります。
大規模なガス爆発やガス漏洩を含む環境破壊事故は一度も発生していません。
日本ではほとんど発掘されていないために、世界各地から輸入しているのが現状です。
都市ガス
LNGは都市ガスの主原料になります。
LNGをそのまま気化させた天然ガスがそのまま都市ガスとして利用されるというイメージがあるかもしれませんが、そのままでは都市ガスとして供給することはできません。
都市ガスには熱量なの規定があるため、プロパンガスなどと混ぜて調整を行うのです。
例えば東京ガスの13Aという規格の場合、1m3あたりの標準熱量が45メガジュールと定められています。
また、天然ガスやプロパンガスは無色無臭の気体なので、ガス漏れを起こしたときにすぐに気付けるように特徴的な匂いをつけています。
これを付臭と言います。
都市ガスの製造
LNGは、一度、受入基地のタンクに貯蔵し、その後、気化・熱量調整・付臭したものを「都市ガス」としてお客さまへ供給しています。
LNG受入基地とガス導管がつながっていない一部の地域には、ローリー車や貨車でLNGを輸送し、サテライト基地等でLNGを気化・熱量調整・付臭して供給しています。一部の都市ガス事業者では、国内で採取された天然ガスを都市ガスの原料としており、熱量調整・付臭して供給しています。
世界でも、アメリカをはじめ、イギリス、イタリア、ドイツ、フランス、カナダなどの欧米諸国でも、基幹都市エネルギーとして天然ガスが活躍しています。
天然ガスのデメリット
天然ガスはクリーンで豊富な資源ですが、コストや保管の面にはデメリットもあります。
移送コストがかかる
海外からの輸送コストが高いというデメリットがあります。
天然ガスを日本まで運ぶためには、マイナス162℃という非常に低温にして冷却し、それを維持したままLNGタンカーを利用する必要があります。
また、天然ガスを海外で購入する場合は、ガス状のまま引き渡されるので、液化・輸送を行うのは買い手側、つまり日本側ですべて行う必要があるのです。
天然ガスを日本に運ぶためには、少なくとも海外のガス田から港まで運ぶパイプライン、港での液化設備、液化した天然ガスを積み込むためのタンカーなど、多くの設備が必要となります。
また、天然ガス用のタンカーはガス田ごとに仕様が違うので、そのガス田にあわせたタンカーを造らないとなりません。
以上のような理由で、日本が天然ガスを輸入するとなると割高になってしまうのです。
長期保存ができない
日本で天然ガスを保存しておくには、マイナス162℃という非常に低温で維持し続ける必要があります。
そのための設備も必要で、更に低温を維持し続けるということは、保管するだけで大きなコストが発生することになります。
石油タンクのようなタンクを大量作れば大量の天然ガスを保存できますが、冷却維持するためのコストも更に必要になり、さらなるコストがかかるのです。
LNGにはこういった特性があるために長期保存ができず、到着してすぐに使わなければいけないというデメリットが発生するのです。
こういったコストの問題から、天然ガスは長くて2週間ぐらいで使われるように計画して輸入されているのです。
日本の天然ガスと地下資源
国産の天然ガスはどうなのでしょうか?
実は国産の天然ガスは、全体の使用量の3%しかありません。
2014年、秋田でシェールオイルが試験的に発掘されました。
そして最近になって日本近海にはメタンハイドレードという新しいエネルギー資源が大量にあることがわかました。
南海トラフだけでも日本の消費量の13年分もあることがわかり、周辺の近海全てを合わせると100年以上あると推定されています。
しかし、このメタンハイドレートの採掘技術はまだ実用化されておらず、採掘試験を行っている段階で、この資源を取り出すためには採掘技術を確立する必要があります。
また、日本は地震が多いのでそれに対応する必要もあり、技術が確立したとしても採掘コストを下げて安価に供給できるようにしなければ、従来の石油などの資源に取って代わることは難しいのが現状です。
メタンガスというのはすぐに気化しやすい物質ですが、日本にあるメタンハイドレードは海底の深い部分にあり、すでに固体化されています。
このために取り出す採掘技術は比較的実用化しやすいと言われています。
世界の天然ガスの埋蔵量
天然ガスの埋蔵量は、全世界で約198.8兆m3(2020年現在)が確認されています。
これは50年以上と、石油に比べても長く、更に新しいガス田も次々と発見されています。
中東地域に偏在している石油とは異なり、産出国も世界各地に広く分布していることも大きな特徴です。
天然ガスの輸入は、長期契約に基づき、液化から輸送・受け入れまで一貫したプロジェクトとして進められるので、将来にわたり安定確保が可能になっています。
世界各地で産出され、埋蔵量も豊富です
天然ガスは世界各地に広く豊富に埋蔵されており、可採年数は50年といわれています。また、現在も新しいガス田が世界中で開発され、長期にわたる安定供給が見込まれています。
まとめ
いかがでしたか?
今回はLNGと天然ガス、都市ガスの違いとそれぞれの特徴をご紹介してきました。
LNGは採掘された天然ガスをタンカーで輸送するためにマイナス162℃という非常に低温にすることで液化した天然ガスのことを言います。
都市ガスはこのLNG、天然ガスを主原料にしているということがお分かりいただけたと思います。
天然ガスは石油資源に比べるとクリーンで豊富な資源のため、積極的に利用していきたいですね。