LNG(液化天然ガス)の温度について

LNG(液化天然ガス)の温度はどれくらい?

 

記事のポイント
  • 天然ガスをLNGに変える時の温度は約マイナス160℃
  • 天然ガスがLNGに変化する温度は産出地域や成分によって違う
  • LNGを天然ガスに戻す際のエネルギーも利活用されている

LNG(エルエヌジー)は気体である天然ガスを液体にしたもので、マイナス162℃という超低温にして保管をおこなっています。

しかし、実際に液化する温度とは僅かに異なっています。

どうしてそんなことが起こるのかなど、今回はLNGや天然ガスの温度について説明をしていきます。

目次

LNG(エルエヌジー)とは

LNG(エルエヌジー)とは

LNG(Liquefied Natural Gas,液化天然ガス)は、気体である天然ガスを超低温まで冷却して無色透明の液体の状態に変えたものです。

天然ガスは気体の状態で地中の奥深くにありますが、その気体をマイナス162℃まで冷やすことで液体に変化させて、体積(大きさ)を600分の1にしています。

600分の1の大きさというと、例えば学校のプール(25m×12m×0.8m)の気体が、家庭用のおふろ(200リットル)わずか2杯分になる計算です。

そうして冷却し、体積が液体に変わった天然ガスが液化天然ガス(LNG)です。

このように液化して体積を小さくして巨大なLNGタンカーで運ぶことで、一度に16万5千㎥という大きな量を運ぶことが可能にしています。
これは22万軒の家で1年間使用される程のガスの量です。

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天然ガスがLNGへ変化する温度について

天然ガスがLNGへ変化する温度について

LNGはマイナス162℃で保管を行いますが、天然ガスが実際に液体へと変化を始める温度はマイナス162℃よりもう少し高いマイナス160℃です。

天然ガスはメタン、エタンなどが混ざりあった可燃性の気体です。

この気体を液体に変化させるには超低温まで温度を下げ、沸騰温度(沸点)を下回る必要があります。

沸騰温度(沸点)とは

例えば水は常温常圧の環境では液体ですが、約100℃を超えること沸騰を始め、気体へと変わります。
この液体から気体へ変化する温度を沸騰温度(沸点)と言います。
そのため、水の沸点はおよそ100℃ということになります。

常温で元々が気体の状態の天然ガスは液体に変化させるためにもっとずっと低い温度まで冷却を行っています。

天然ガスがLNGに変化する沸騰温度

天然ガスの沸点は常圧の環境ではおよそマイナス160℃です。
しかし、天然ガスの主成分であるメタンガスの沸点はマイナス161.5℃です。

この少しの差は、天然ガスに含まれているメタンガス以外の成分が関係していることに由来しています。

天然ガスの成分

天然ガスにはメタン・エタン・プロパン・ブタン・ペンタン以上の炭素化合物や窒素が含まれ、産出する場所によって割合が少しずつ異なります。

産地による成分の違いの例(単位は mol/100mol)
産地 メタン エタン プロパン ブタン ペンタン 窒素
ケナイ(アラスカ) 99.81 0.07 0.00 0.00 0.00 0.12
ルムート(ブルネイ) 89.83 5.89 2.92 1.30 0.04 0.02
ダス(アブダビ) 82.07 15.86 1.86 0.13 0.00 0.05

これらの他にも不純物として、水・炭酸ガス・硫黄酸化物・硫化水素・二酸化炭素などを含んでいる場合があります。

このように、産出する地域で組成が異なっており、燃焼した際の熱量なども違います。
そのためメタンガスの沸点と僅かな違いがおこっています。

LNGの成分ごとの沸騰温度や自然発火温度

LNG・天然ガスに含まれている成分ごとの物性は以下のとおりです。

名称 メタン エタン プロパン ブタン
(ノルマル/イソ)
分子式 CH4 C2H6 C3H8 C4H10
分子量 16.04 30.07 44.09 58.12
沸点(℃) マイナス161.5 マイナス88.7 マイナス42.2 マイナス0.5/マイナス11.7
自然発火温度(℃) 537 472 450 365/460
比重 液体(沸点、1気圧) 0.425 0.546 0.580 0.605/0.590
比重 気体(0℃、1気圧) 0.554 1.047 1.522 2.006

このように、常圧下でのメタンの沸点はマイナス161.5℃ですが、他に含まれているエタンやプロパンなどの沸点がメタンよりも高い温度のため、約マイナス160℃液体に変化することが理解していただけると思います。

しかし、産出する地域で含まれている気体の割合が異なるため、同じ天然ガスといえど、実際に液体へ変化する温度は異なります。

そのため、天然ガスの沸点は約マイナス160℃という表現になります。

常圧下でのメタンの沸点は-161.5℃であり、LNGの沸点は-160℃程度になる。このため常圧下で液化するには極低温が必要になる。

また、加圧して沸点を上昇させたとしても、臨界温度は-82.6℃であり、この温度以上ではいくら加圧しても液化はしない。

(中略)

事故などにより極低温状態のメタンが漏れて-161.5℃以上で気体になると空気の1.4倍程度の重さとなりまず地上に漂うことになる。このガスと周囲の空気との境界で空中の水分を凍らせ白い雲を作る。

これが蒸気雲(ベイパークラウド)と呼ばれ、透明なガスが間接的に人の目に触れることになる。
この状態においては、爆発的な燃焼や凍傷、窒息の危険がある。
しばらくは地上に留まった低温メタンガスも、温度が-131℃を超えると空気よりも軽くなり、空中へと上昇・拡散していく。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』天然ガス 物性より引用

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LNGを気体の天然ガスへの戻し方とエネルギーの利活用

LNGを気体の天然ガスへの戻し方とエネルギーの利活用

液化した天然ガスであるLNGを元の気体の状態に戻すためには海水のシャワーをかけて温度を上げて気化させます。

天然ガスは97%が輸入に頼っています。
そのため、ほとんどがLNGとして超低温で運搬され、特殊な容器で保管され、必要に応じて解凍を行うことになります。

液体で貯められたLNGを解凍するときは専用の設備の中で外部から海水シャワーをかけ、天然ガスにもどします。

LNGはマイナス162℃の超低温ですので、海水との温度差はおよそ180℃にもなります。
そのため、海水をかければ簡単に気体させることが可能です。

LNGのエネルギーへの利活用

マイナス162℃という超低温のLNGですが、その冷たさはLNGの保管基地周辺で利活用されています。

LNGの気化を利用した発電

LNGを天然ガスに戻す時に起こる圧力は無駄なく利用され、そのエネルギーで発電を行っています。

LNGは超低温で保管されているとともに、体積が600分の1というとてもコンパクトな状態で保管されています。

つまり、超低温のLNGを液体から気体に戻すとき、液体にするときとは逆に体積が一気に約600倍に膨らむことになります。

これはとても強い圧力です。

その圧力を利用することで発電機のタービンを回し、発電を行います。

LNGの冷熱エネルギーの食品などへの利活用

LNGはマイナス162℃というとても低い温度です。
その冷熱エネルギーも利活用され、食品などへ利用されています。

LNGは、1キログラムで2.5キログラムの水を氷にしてしまうほどの大きな冷熱エネルギーがあります。

液化天然ガスの冷熱エネルギーを利用すれば、炭酸ガスの温度を効率的にマイナス50℃に下げることも可能です。

炭酸ガスを液体にしたものは「液化炭酸」といって、サイダーなどの炭酸飲料をつくるときに使われています。

液化炭酸をさらに冷やして固体にすると、アイスクリームを冷やしておくのに使うドライアイスになります。
ほかにも、マグロやエビなどを、とれたてと同じ状態で2年以上保存することもできます。

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LNGの超低温はどうやって維持されている?

LNGの超低温はどうやって維持されている?

LNGはマイナス162℃という超低温を維持するために特殊な容器で保管されています。

LNGを低温に大量に貯蔵するために使われているタンクは保冷層(断熱層)を設けた二重殻構造となっており、外気の影響を受けにくいようにしてあります。

タンクの仕様の一例は以下のようなものです。

金属二重殻低温タンク・PCLNGタンク

仕様
内容物 液化天然ガス
(LNG)
容量 10,000㎥
設計温度 マイナス164℃
サイズ φ24,800mm
×25,984mm

縦型LNGタンク

仕様
内容物 液化天然ガス
(LNG)
容量 2400㎥
設計温度 マイナス164℃
サイズ φ14,000mm
×27,950mm
内槽材質 SUS304

まとめ

いかがでしたか?

今回はLNGの温度にまつわる話をまとめてご紹介しました。

LNGはマイナス162℃というとても低い温度で運搬・保管されています。

LNGを液化するときの温度である沸騰温度(沸点)はメタンの沸点とほぼ近いものですが、産出する成分の内訳に応じて変化しますが、マイナス160℃前後で液化しているということもお分かりいただけたと思います。

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