日本は、地震をはじめ自然災害の多い国です。
大規模災害によって自宅が居住できない状態になり、しばらく避難所で生活しなければならない・・・。
もしあなたがこのような状況に置かれたら、一体どうすればいいのでしょうか?
実は避難所にもさまざまな名称があり、その役割もそれぞれ異なります。
今日は避難所の種類と役割、そして過ごし方についてお話します。
目次
役割の違う2種類の避難所
「避難所」とは、「災害対策基本法」という法律にて名称や役割が定められていて、2013年の改正で2種類の避難所に定義されました。
それぞれ使用されるタイミングが異なるので、自宅周辺の避難所がどちらに該当するのかを調べておきましょう。
1. 避難場所(指定緊急避難場所)
命を守るためにまず逃げ込む場所です。
災害が発生または、発生する恐れがある場合にその危険から逃れるための避難場所として、安全性などの一定の基準を満たす施設が、「避難場所(指定緊急避難場所)」です。
自治体により一時避難地・緊急避難施設・広域避難場所などの名称でも呼ばれています。
大地震であれば、津波を避ける高い場所や火災を避ける広い場所、台風や大雨であれば、浸水や土砂災害を避ける河川や土砂災害発生地域から離れた場所などになります。
2. 避難所(指定避難所)
緊急避難後に一時滞在する場所です。
被災の危険性があり避難した住民を、災害の危険性がなくなるまで必要な間滞在させる、または、災害により家に戻れなくなった住民などを一時的に滞在させるための施設が「避難所(指定避難所)」です。
避難所での過ごし方
避難所での過ごし方を生活の場面別に見てゆきましょう。
食事について
避難所には備蓄食料が用意されていますが、その数と内容は必ずしも十分とは言えません。
また外部からの支援が開始されるのにも数日かかりますので、大規模災害の場合は自分たちで初期の食料をまかなう必要があります。
まずは火を使わなくても食べられるものを持参するようにしましょう。
トイレについて
大規模災害が発生した際、常に問題となるのがトイレです。
災害で停電や断水が生じてトイレが使えなくなった場合、本格的な仮設トイレが設置されるまで数日かかってしまうことも。
水が流れないトイレで用を足してしまうと、非常に不衛生です。
仮設トイレの設置が完了するまでは、備蓄されている非常用トイレか自宅から持参する携帯用トイレを使う必要があります。
衛生管理・風呂について
集団生活においては、感染症や食中毒の発生に注意する必要があります。
トイレのあとや食事の前にはウェットテッシュなどで手指を清潔にし、普段はマスク着用して感染の防止に努めましょう。
避難所に風呂が設置されるのにも時間がかかり、入浴設備があったとしても避難者数に対して設備数が足りなかったり、使用できる水にも限りがあるので利用できる機会がなかなか回ってこない可能性も考えられます。
ボディ用のウェットタオルなどを使ってケアしたり、可能なら自宅に戻って行水をしましょう。
集団生活の注意点
多くの避難者が身を寄せる避難所は狭い空間での集団生活となるため、ともに助け合う気持ちを持つことが不可欠となります。
また、避難生活が長期化すればストレスがたまり、トラブルも起こりがちになります。
他人のスペースに立ち入ったりのぞいたりすることは避け、お互いのプライバシーを尊重して過ごしましょう。
特に、夜間の会話の音漏れやスマホ操作の光漏れ、就寝時のいびき、歯ぎしり、寝言などは知らず知らずのうちにストレスとなり睡眠不足につながる場合もあります。
眠るときにはアイマスクや耳栓で光・音対策をしておくと良いでしょう。
避難所生活で想定されるリスク
トイレ問題
慣れない避難所生活では、多くの人が「トイレに行きづらい」と感じるようです。
その結果、トイレを我慢して便秘や膀胱炎になったり、トイレの回数を減らそうと食事や水分の摂取を控えることから、脱水症状、脳梗塞、心筋梗塞など、命を落とすリスクにつながることもあります。
熱中症
多くの人が集団生活を行う避難所では、室内の温度が上昇しやすい傾向にあります。
また、体育館など十分な空調設備が整っていない施設もあるので、夏場は熱がこもりやすく熱中症の危険が高まります。
重症化すると命を落とす危険もあるので、特に体温調節機能が低下している高齢者の方は注意が必要です。
感染症の流行
密集した環境下で多人数が暮らす避難所での生活は、インフルエンザや急性胃腸炎などの感染リスクが高まります。
東日本大震災では、岩手県内の避難所で数十人規模のインフルエンザが集団発生しました。
また、熊本地震では南阿蘇村の避難所でノロウイルスが検出され、14人が病院に搬送されました。
新型コロナウイルスにおいては、有効な薬も広まっていないため、特に注意が必要です。
セクハラ・性犯罪
避難所では個人のプライバシーが十分に確保されにくい場合も多く、それにともなうセクハラなどの嫌がらせや性犯罪のリスクも高くなると言われています。
女性や子供は単独行動をしないようにしましょう。
エコノミークラス症候群
血行不良でできた血栓が肺の静脈を詰まらせることで起こる「エコノミークラス症候群」。
限られたスペースでの避難所生活や車中での避難生活は、狭い空間で長時間座って足を動かさないことが多いため発症のリスクが高くなります。
以下の対策をして未然に防ぎましょう。
- できるだけ体を動かす
- 座った体勢でも足の指やつま先を動かすなどの運動をする
- 十分な水分をとる
- ゆったりとした服装で過ごす
ペットを連れての避難について
環境省が出しているガイドラインでは、ペットの扱いは原則は「自助」となっています。
つまり災害時にペットの安全を確保するのは飼い主の責任で、避難が必要な状況になったら基本は「同行避難」することとしています。
「同行避難」というのはあくまで「飼い主が自らの安全を確保した上でペットも安全な所につれて行く」という意味です。
ペットは避難所に入れるかもしれないが、人と分かれて外に置く形かもしれないし、避難所では受け入れてもらえない可能性があるのがというのが現状です。
避難所でのペットの扱いは自治体や管理者の判断に委ねられていて、ちゃんとしたルールが定められていないところが多いのが現状です。
住んでいるエリアの避難所ではペットの受け入れはどうなるか?そもそもルールはあるのか?など事前に問い合わせておいた方がいいでしょう。
避難所でのコロナ対策
避難所へ避難する場合は、準備している非常持ち出し品のほか、新型コロナウイルス感染症対策として次のものを普段から揃えておきましょう。
- 体温計
- マスク(予備で数枚)
- アルコール消毒液
- 石けん・ハンドソープ
- ペーパータオル
- 使い捨てビニール手袋
- ハイターなどの消毒剤
- 防寒、熱中症対策グッズ(換気の窓開放に備えるため)
- 室内履き・スリッパ
まとめ
いかがでしたか?
大勢の人が集まる避難所では、スペースの確保が早い者勝ちになってしまったり、赤ちゃんの泣き声を気にする家族が廊下で生活したりと、さまざまな問題が表面化しがちです。
多くの人が少しでも心地よく過ごせるよう、避難者同士で声をかけ合って助け合うことが大切です。
ルールやマナーを守り、譲り合いの心を持って利用しましょう。