- LPガスとはプロパンガスやブタンガスなどの液体状のものの総称である
- 家庭用で使われるLPガスは「プロパンガス」と呼ばれる
- プロパンガスとブタンガスの性質は厳密には異なる
今日はプロパンガスなどのLPガスの分類や化学的な性質について説明していきます。
目次
LPガスとプロパンガスの違い
基本的にはプロパンガスとLPガスはほとんど同じものです。
LPガスは「Liquefied Petroleum Gas」を略した用語で、日本語では「液化石油ガス」と呼ばれます。
その主要な成分の中にプロパンガスやブタンガスといった炭化水素化合物が含まれています。
一般的な家庭で使う「プロパンガス」と呼ぶものも、プロパンガスを主成分としたプロパンガスとブタンガスの混合ガスです。
家庭用のLPガスが一般的に「プロパンガス」といわれることが多いのは、プロパンの占める割合が大きいからです。
一方、工業用として使用されているLPガスはブタンガスが主要な成分になっていますが、家庭用としても使用されるブタンガスもあります。
最も一般的なのは、カセットコンロ用のボンベに入ったタイプのブタンガスで、そのほかにも使い捨てライターやスプレー缶などの一部にもブタンガスが利用されています。
LPガスはプロパンガスやブタンガスなどの液体状になった石油ガスの総称ですので、より厳密にはLPガスよりもプロパンガスやブタンガスの方が詳細な分類と言えます。
こうしてガスを気体から液体にすると、体積をおよそ250倍にも小さくすることが可能です。
そうして持ち運びが容易に出来るのがLPガスの大きな利点の1つです。
また、LPガスは燃焼時のCO2排出量がガソリンや灯油などに比べおよそ10%少ないことから、化石燃料の中ではクリーンなエネルギーとして位置づけられています。
プロパンガスとブタンガスの違い
プロパンガスとブタンガスはLPガスよりもより詳細な分類だと説明しましたが、プロパンガスとブタンガスには違いがあるのでしょうか。
ブタンガスはプロパンガスに比べ液化する温度が高いため、容易に液化することが可能です。
その反面、気化するときに周りから熱を吸収することから、ボンベの温度が急速に低下し、気化不良を起こす場合があります。
そのため、寒冷地などで使用する場合には、ボンベの中身が残ってしまうドロップダウンという現象が起こってしまいます。
これを防ぐため、寒冷地用のカセットボンベの中には30~50%をイソブタンにしたカセットボンベなども販売されています。
それでは、一般家庭でよく使われるプロパンガスとブタンガス、寒冷地用のイソブタンガスは何が違うのでしょうか?
実はガスを燃焼させた際の「熱量(燃焼エネルギー)」にはほとんど差が無く、ガスの「沸点」と「蒸気圧」が大きく異なっています。
名称 | 化学式 | 沸点[℃] | 蒸気圧([hPa][20℃]) | 燃焼エネルギー[kJ/g] |
ブタン(ノルマルブタン) | C4H10 | -0.5 | 2,213 | 42.8 |
イソブタン | C4H10 | -11.7 | 3,113 | 42.8 |
プロパン | C3H8 | -42.09 | 8,513 | 44.0 |
寒冷地用のガスボンベの主成分であるイソブタンとプロパンは、一般的なカセットボンベの主成分であるブタンと比較して、「蒸気圧」や「沸点」が高くなっています。
蒸気圧が高いとボンベから吹き出してくるガスの量が多くなるため、同じ時間で得られる火力が強力になります。
そのため、同じ容量のボンベを使用した場合、寒冷地用のカセットボンベの方が早く空になります。
また、沸点も同様にイソブタンやプロパンのほうがブタンより低くなっています。
沸点は液化ガスが気化する温度で、ガスは気化しないと火がつきません。
ブタンの沸点はマイナス0.5℃なので、氷点下など気温の低い場所ではブタンガスのカセットボンベは気体にならずうまく火がつかないため、ガス器具で使用できなくなります。
そのため、寒冷地用のガスボンベには、沸点がより低いイソブタンやプロパンを充填して気化がしやすいようにしています。
イソブタンは沸点がマイナス11.7℃ですから、氷点下でもある程度は使えます。
しかしより寒い場所ではやはり蒸気圧が大気圧以下になり、ガスを外に取り出すことができなくなります。
そのため沸点がマイナス42.09℃と低いプロパンを混合し、低温下でも使用できるように工夫されています。
このように、プロパンガスとブタンガスでは沸点や蒸気圧が異なる、ということはお分かりいただけたでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
プロパンガスやブタンガスなど、それぞれに化学的な性質の違いがあることをご説明しました。
家庭で一般的に使用するLPガスといえばプロパンガスのことですので、間違える心配はありませんが、設置はプロに任せるようにしましょう。