「盗電」とは、電気を目的とした窃盗のことで、正式には「電気窃盗」といいます。
窃盗とはいえ、電気の様態が他の財物とは大きく異なるため、過去にその犯罪の成否をめぐって激しい論争が繰り広げられたことがありました。
おそらく盗電と聞いてもピンとくる方は少なく、盗られる方を想像すると思います。
しかし、あなたが外出先で無意識にやっている行動が実は「盗電」にあたることがあるのです。
今日は、「盗電」についてお話したいと思います。
目次
電気の泥棒
配電設備に不法な配線を設置して電気を盗む盗電は、今の日本ではあまり見ることはありません。
しかし、昔はよく散見されて当時の社会問題となっていました。
明治初期の刑法では、第三者所有の「具体的な物質(財物)」を不法に窃取することが窃盗罪として規定されていました。
そのため、当時の裁判では「電気を盗ることが窃盗罪になるかどうか」という大規模な法廷闘争になりました。
電気の泥棒は窃盗罪にあたる
電気は本来、「物」ではないので「財物にあたらないのではないか?」と考えてしまいがちですが、刑法245条「この章の罪(窃盗罪を含む財産犯)については、電気は、財物とみなす」と、電気を財物とみなしています。
そのため、無断使用すると盗難や窃盗にあたります。
民事上、盗電行為は民法709条の不法行為に該当し、盗電者は他人(電力契約者)の権利を違法に侵害したので、それによって生じた損害を賠償する責任を負います。
つまり、電気代相当額を電力契約者に賠償する必要がでてくるのです。
盗電の過去の判例
では、どのような例があったのかを見てみましょう。
共用コンセントから盗電
電気料金滞納のために電気を止められた男性が、アパートの共用コンセントから電気を引いてテレビを見ていました。
どうしてもテレビが見たいということで行ったようです。
被害額は2円50銭相当でしたが、これに対し大阪地裁は懲役1年執行猶予3年の刑を言い渡しました。
コインランドリーで盗電
兵庫県内のコインランドリーにて店内のコンセントでパソコンを充電していたとして、男性が逮捕されました。
前日から雨をしのぐためにコインランドリー店に忍び込んで寝袋で一夜を明かしていたといいます。
駅ビルのコンセントから盗電
女子高生が携帯電話でメール操作中に電源が切れて、駅ビルの通路のコンセントで30分間充電しました。
女子高生は電気を盗んだ疑いで検挙されましたが、被害額は3銭でした。
しかしこの事件は裁判にはならずに、微罪処分とされました。
隣の家から盗電
京都の事件では、隣家の屋外に設置してあったコンセントから、延長コードを使い電気を窃盗していた女性が逮捕されています。
自宅の電気が止められていたために2014年3月から2015年1月までの間、約2万2000円分もの電気を盗みました。
現代の盗電について
最近では携帯電話などのこまめな充電を要する携帯機器の急速な発展と普及に伴い、公共の場や店舗のコンセントを勝手に利用して充電をすることがカジュアルに行われる傾向にあります。
イートインコーナーや高速バスの座席など、利用者が自由に利用することを前提としている場合には盗電とはなりませんが、それ以外のコンセントを施設管理者の許可無く利用した場合は「盗電」となります。
こういった盗電事案は警察の段階で多くの場合は被害額が微小であるとして微罪処分とするケースも多いですが、場合によっては逮捕や書類送検されるケースもあるのです。
以前は窃盗罪は懲役刑しか規定がなく被害額も微小なため、微罪処分であったり不起訴処分となっていましたが、2006年の刑法改正で罰金刑が加えられたことにより窃盗罪として起訴される可能性が高くなりました。
判断基準について
カフェのテーブルに設置されているようなコンセントはお客さんが充電するため、あるいは充電することを見越して設置されていると考えられます。
このような場合は、充電しても窃盗罪にはなりません。
では、店の端っこにあるようなコンセントはどうなのでしょうか。
店側からすれば、これはお客さんが利用するものではなく、業務のために用意しているコンセントにあたります
お店側はお客さんの利用を想定していないので、勝手に充電した場合は窃盗罪に問われる可能性が発生します。
テーブルにコンセントが設置されていないカフェで、どうしても充電する必要が発生した場合は、お店の人に一言断りを入れる必要があると言えます。
まとめ
電気盗難は日常的に発生しています。
たとえ1銭の電気代分の窃盗だとしても、無断拝借すれば窃盗罪になるのです。
携帯電話やスマートフォンのバッテリーがなくなりコンセントを使用したいと思っている時に、ついつい駅やお店のコンセントを使って充電すると、窃盗罪になってしまいます。
これは本人が罪になると知らずに行っても、窃盗罪になるので注意が必要です。